自己実現の正体 ーー 夢を叶えたい欲求が存在しない理由

2020年1月23日
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マズローの欲求5段階説をご存知の方は沢山いらっしゃると思います。よく使われるのがこんなピラミッドの図形↓

下の欲求が満たされると上位の欲求を満たしたくなり、最終的には「自己実現」(夢を叶えたい)を目指すようになるんだ、と。

 

多少心理学に詳しい方なら、「自己実現」は夢を叶えたいと思う欲求ではなく、「ありのままの自分でいたい欲求だからみんな勘違いしている!」とツッコみたくなるかもしれませんが、このやり取り自体不毛です。

なぜなら、マズローの欲求5段階説は欲求の話なのに生物学的視点が欠如しているから。

 

自己実現欲求など存在しない

 

2010年に進化心理学者のダグラス・ケンリックらが生物学的知見を取り入れ、欲求ピラミッドを作り直しました(1)。

それがこちら↓

 

ピラミッドの頂点は「子育て」になり、なんと「自己実現欲求」が消えてしまいました。

いやいや、そんなはずはありません。

「私には叶えたい夢もあるし、自分らしく生きたい気持ちもある。自己実現欲求はあるはずだ!」そう思う方もいらっしゃるでしょう。

 

では、我々が抱く自己実現欲求はどこに行ってしまったのでしょうか。

 

自己実現欲求の正体に迫る

 

そこで参考になるのが、アリゾナ州立大学の研究です(2)。

この研究は、自己実現欲求の正体を進化心理学的観点から分析し、突き止めようとしたもの。

 

自己実現欲求は、他の欲求と同様に、生物学的および社会的な利害に関係なく沸き起こる可能性は低い。

 

ヒトが「夢を叶えたい」・「自分らしくいたい」と思うのには、根底になんらかの生物学的目標(生存と生殖)に紐づいているんだ、と。

そこで、この研究では2回に渡って自己実現の正体を調査していて、

 

  1. 208人の大学生を対象に「自己実現ってなんですか?」と質問しまくった調査
  2. サンプル数を約2倍にし、18歳から74歳517人を対象に同様の調査

 

「自己実現って何ですか?」・「どんな時に自己実現したと感じます?」と深掘りしてもらい、根底にある欲求を明らかにしようとしました。

で、その結果はこちら↓

 

自己実現欲求を掘り下げてみると、ケンリックが提唱した他の欲求と関連していたそうなんですよ。

この結果から、自己実現欲求そのものは存在せず、他の欲求を「自己実現」と言い換えたに過ぎない、って事になりますね。

これが存在しない理由です。

 

自己実現と最も関連しているのが「地位」、次いで「所属」。

つまり、我々が抱く自己実現の正体とは、

 

  • 地位の向上(尊敬されたい、一目置かれたい)と所属(なんらかの集団に属していたい)の意である!

 

なんともストレートな表現をしましたが、ヒトの欲求なんて生々しいものです。

 

性別・年齢別の自己実現傾向

 

他の傾向も見てますと、割と生物学的に合理的な傾向が確認されていて面白いです。

 

  • 年齢を重ねるにつれ、地位と所属の欲求が衰えていく

 

そもそも、地位と所属を求める理由は配偶者の獲得(モテたい)ですから、この結果にも納得かと。元気な人は別でしょうが…

 

  • 男性は女性よりも地位を求め、女性は地位と所属を同程度求める

 

より高い地位を有していると異性にモテます。そうなると、遺伝子を残す可能性が高まりますよね。

なので、男性は特に地位を求めるよう遺伝子に刻み込まれているのでしょう。

 

一方、女性もモテるために地位を求めますが、子どもを産み育てなくてはならないので、集団に所属し、子育てをやり遂げる必要があります。

よく、男性は縦社会、女性は横社会と言われますが、進化の過程で備わった合理的な性質と言えますね。

 

  • 子どもがいる人は家族との良好な関係を自己実現に結びつけやすい

 

なんと言っても我々サピエンスの目標は遺伝子を後世に残す事ですから、子どもが産まれると自己実現欲求が地位と所属から家族との関係維持にシフトするんです。

 

自己実現を追い求めるのはやめよう

 

一般的に、学校では「将来の夢」と題した作文を書かせたり、進路相談では将来の目標を立てさせ、大学でも同様のキャリア教育を受けさせます。

そして、我々は「夢」という高貴な目標に向かうのが美徳であると教えられ、存在に疑いを向けません。

 

しかし、生物学的な知見を取り入れるとその正体は「地位と所属」である事が判明しました。

これは不都合な事実でしょうか?「夢」ビジネスをしている人にとってはそうでしょう。

 

ですが、子ども達の将来を想う教育者には使える重要な知識なはずです。

以下は中央教育審議会(答申)によるキャリア教育の定義になりますが、至近的な要素しか挙げられていません(詳しくはこちらから

 

 

もっと究極的な話(なぜ)をしていかないと、キャリアを通して幸せを獲得できないでしょう。

まとめ

①自己実現の正体は地位の向上と所属。

 

②自己実現はヒトが抱く欲求を言い換えたものに過ぎない。よって、年齢や状況によって大いに変わる。

 

③夢を追い求めるよりも、

  • 地位が得られそうな場所で勝負する
  • 仲間の多い場所を見つける

この二つの軸を外さなければ、満足度の高いキャリアになるだろう。実現できそうになければ環境を変えるべし。

 

そもそも「夢」を掲げるようにヒトは進化していませんからね。

なので、多くの人は「夢」に振り回されてしまうんです。

 

漠然と方向性だけ決めて、後は地位と所属が得られる環境探しに徹した方がいい気がします。

 

ただし、「地位と所属が欲しい!」と口外すると忌み嫌われてしまう(敵だと思われる)ので、「夢」と言い換える事をオススメします。

「夢」は他者から身を守りながら欲求を追求する為に生まれた道具なので、そうした方が適応的です。

 

 

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